しばしば「安全資産」とみなされる金価格は、足元で上昇している。世界的に地政学的・経済的不確実性が高まっていることを追い風に、この1年で1オンス当たり約2,300ドルから3,500ドル近辺まで上昇した。
すでに金を生産している鉱山会社にとって、この価格上昇は多くの場合、キャッシュフローと利益の増加につながっている。ここでは、金価格上昇の恩恵を受けている鉱山会社をいくつか見ていく。
Alamos Gold
金価格が上昇すると、金生産会社の利益も上昇することが多い。このような局面では、生産会社の売上高がコストよりも速いペースで増加する傾向があり、営業レバレッジの要素が生じる。
Alamos Gold(4.96%)はその好例だ。同社はカナダとメキシコで事業を展開するカナダの金生産会社で、トロント証券取引所(TSX)とニューヨーク証券取引所(NYSE)の両方に上場している。
第4四半期1において、同社の実現金価格は1オンス当たり2,632ドルとなり、2023年第4四半期の1,974ドルから上昇した。この結果、第4四半期の営業収益は3億7,600万ドルと前年同期比47%増となった。調整後純利益は前年同期比110%増の1億300万ドル、営業活動によるキャッシュフロー(運転資本調整前)は73%増の2億800万ドルとなった。
通期では、Alamosの売上高は13億4,700万ドルと前年比32%増となった。生産量の伸びが前年比7%にとどまったにもかかわらずこの増収を達成した点は注目に値する。調整後純利益は58%増の3億2,900万ドルとなり、金価格上昇局面において金鉱山会社が発揮し得る営業レバレッジの大きさを浮き彫りにした。同期間のフリーキャッシュフローは2億7,200万ドルと前年比120%増となった。
今後については、Alamosは2025年の金生産量を58万~63万オンスと見込んでおり、2024年の56万7,000オンスから増加する見通しだ。総維持コスト(AISC)は1オンス当たり1,250~1,300ドルを見込んでいる。現在の金価格が1オンス当たり3,400ドルを上回っていることを踏まえると、同社は当面良好なポジションにあるとみられる。
AngloGold Ashanti
AngloGold Ashanti(5.20%)も、足元で利益が拡大しているもう一つの金鉱山会社である。同社は米国、ブラジル、オーストラリア、エジプトなど9カ国で事業を展開するグローバルな金鉱山会社で、NYSEに主要上場している。
平均受取金価格1オンス当たり2,653ドルに支えられ、AngloGold Ashantiの2024年第4四半期2の営業活動による純キャッシュフローは6億9,000万ドルと前年同期比71%増となった。ヘッドライン利益(headline earnings)は4億500万ドルと前年同期比366%増となった。
通期では、営業活動による純キャッシュフローは19億6,800万ドル(前年比+103%)、ヘッドライン利益は9億5,400万ドル(同+2,174%)となった。この好業績により、同社は有利子負債残高を55%削減するとともに、下期配当を263%増の1株当たり69米セントに引き上げることができた。
2025年について、AngloGold Ashantiは金生産量を290.0万~322.5万オンスと見込んでおり、2024年の266.1万オンスから増加する見通しだ。年間のAISCは1オンス当たり1,580~1,705ドルの範囲を見込んでいる。
Kinross Gold
最後にKinross Gold(4.91%)を見てみよう。同社は米国、カナダ、ブラジル、チリ、モーリタニアに鉱山・プロジェクトを持つ実績ある金鉱山会社で、NYSEとTSXの両方に上場している。
2024年第4四半期3、Kinrossは調整後純利益2億4,000万ドル(1株当たり0.20ドル)を計上し、前年同期の1億4,000万ドル(1株当たり0.11ドル)から増加した。これは平均実現金価格が1オンス当たり2,663ドルとなったことに支えられたものだ。営業活動による純キャッシュフローは7億3,450万ドルとなり、2023年第4四半期の4億1,090万ドルから増加した。
通期では、調整後1株当たり純利益は0.68ドルとなり、前年の0.44ドルから増加した。営業活動による純キャッシュフローは24億4,640万ドルとなり、2023年の16億530万ドルから増加した。この好業績を受けて、同社は8億ドルの負債を返済することができ、財務基盤が強化された。
今年、同社は金生産量を約200万オンスと見込んでいる。AISCは1オンス当たり1,500ドルと予想している。
金鉱山株投資に伴うリスク
ここで指摘しておくべきは、これら3社の金鉱山会社が金価格上昇を背景に足元で高い収益性を実現している一方で、すべての金鉱山会社がそうであるわけではないという点だ。この業界には、操業上のトラブル、地政学的不安定性、環境負債、想定を下回る鉱石埋蔵量の発見など、乗り越えるべき多くの障害があり得るため、金価格の高さが成功を保証するものではない。
個別企業レベルでは様々な問題が起こり得ることを踏まえると、金鉱山株に投資する際には分散投資を行うことが賢明といえる(ただし分散投資はリスクの排除を保証するものではない)。分散投資は、複数の企業に資本を分散させることで、投資家が個別企業リスクを軽減する一助となり得る。





