米国におけるAIのブレークスルーが引き続き大きな注目を集める一方、中国でも同様のAI革命が静かに進行している。数兆パラメータ規模のAIモデルから自動運転のロボタクシーまで、中国は広範で統合的な国内AIエコシステムを急速に構築しており、欧米との技術格差を縮めつつある。
本稿では、この革命の中核を担う中国のAI関連株3社を取り上げる。これらの企業は米国企業に匹敵するAI技術を有し、現在まさに革新的なソリューションを大規模に急速展開していると当社は考えている。
Baiduは包括的なAIエコシステムを構築
Baiduは検索エンジン最大手としての地位で名を馳せてきたが、近年はAI大手としての評価が高まっている。同社はマルチモーダルAIモデルを保有するだけでなく、独自のAI半導体や自動運転タクシー事業も手掛けている。
11月に開催されたカンファレンス「Baidu World 2025」1で、Baiduは最新版のAIモデル「ERNIE 5.0」を発表した。2.4兆パラメータを誇る同モデルは、いずれも1兆パラメータを超え世界トップクラスのAIシステムに数えられるAlibabaの「Qwen3-Max」やMoonshot AIの「Kimi K2」シリーズの2倍2の規模を持つ。ネイティブなオムニモーダルモデルであるERNIE 5.0は、テキスト、画像、音声、動画を統合的にモデル化でき、指示追従、事実に基づく推論、エージェント的な計画立案、ツール使用の各分野で優れた性能を発揮する。同社は今後もモデルの高度化に投資を続け、知能の限界をさらに押し広げていく方針だ。
同カンファレンスでBaiduは、新たなAI半導体2種「昆侖(Kunlun)M100」と「M300」も発表した。M100は大規模な推論処理向けに設計されており、2026年初頭に投入予定。一方M300は学習・推論の両用途向けに開発され、2027年の投入を目指している。さらに同社は、複数のチップを連結する「スーパーノード」ソリューション2種、「天池(Tianchi)256」と「天池512」も発表した。256は、従来のクラスターと比較してAIシステムの提供性能が50%以上向上するとされ、2026年上半期に提供開始予定。512は同年下半期の提供開始を予定している。
Baidu World 2025におけるもう一つの重要な発表が、同社の新しいリアルタイム対話型デジタルヒューマンだ。これは実質的に、現実世界の文脈を理解し、対話の中でフルモーダルな整合性を保ちながら自然な感情表現ができるアバターである。デジタル従業員として機能するよう設計されており、24時間365日のサービス提供が可能だ。同技術はブラジルで先行導入されており、同社は現在、米国や東南アジアといった主要市場への展開機会を模索している。
Baiduのロボタクシー事業「Apollo」に目を向けると、現在週間25万件の注文を処理している。これまでに世界全体で1,700万件の乗車を提供しており、これは世界のロボタクシー企業の中で最多である。同社は今後、自動運転が中国の交通だけでなく、より広範な社会システムをも変革すると見込んでいる。技術コストの低下が続くにつれ、需要は一段と拡大すると予想される。
Xiaomi、スマートグラスとAI搭載の運転支援技術を展開
スマートフォンや電気自動車(EV)で広く知られるXiaomiも、急速にAI分野のリーダーへと台頭している中国企業の一つだ。同社は最近、独自モデルを活用してAI技術を自社エコシステム全体に統合している。
消費者向けデバイス事業では、Xiaomiは2025年にスマートグラス分野で積極的な展開を見せている。同社は今年、AI音声アシスタント、電子式手ぶれ補正(EIS)対応の1,200万画素カメラ、5基のマイク、2基のスピーカーを搭載した「Xiaomi AI Glasses」3を発売した。このグラスを使えば、写真撮影や動画撮影、リアルタイムの言語翻訳、Alipayを使った「一瞥決済」などが可能だ。バッテリー駆動時間は最大8.6時間と、Metaのスマートグラスを上回る。
EV事業に目を向けると、Xiaomiは11月に運転支援プラットフォーム「HAD(Hyper Autonomous Driving)強化版」4を発表した。これは最先端のAI技術を用いて運転の安全性を大幅に高めるプラットフォームである。ここでの重要な機能が「ワールドモデル」で、車載コンピューターが次に起こることをシミュレーションによって予測する仕組みだ。この基盤となっているのが、さまざまな交通状況を運転するドライバーの動画クリップ1,000万本という膨大な学習データである。
注目すべきは、Xiaomi製EVにおける運転支援機能のユーザー利用率の高さだ。同社によれば、Xiaomi EVの所有者の90%超4がこの支援機能を積極的に利用しているという。これまでに、同機能によって推定45万7,000件の衝突事故が未然に防がれたとされ、システムの実社会における有効性を裏付けている。
SenseTime、静かにAIイノベーションを牽引
知名度こそ高くないかもしれないが、SenseTime Groupは中国のAIエコシステムにおける重要なプレーヤーである。高度な大規模言語モデルからスマートオート技術まで幅広いAIソリューションを提供しており、現在多くの業界でイノベーションを牽引している。
SenseTimeのAI事業の中核をなすのが「SenseNova」技術だ。これは同社のAIインフラ「SenseCore」上に構築された、相互に連携するモデル群である。最新版は7月にリリースされた「SenseNova V6.5」5で、テキストおよびマルチモーダル推論においてGemini 2.5 ProやClaude 4 Sonnetを上回っており、強力なモデルと言える。
SenseTimeのSenseNova技術を用いた人気の消費者向けアプリケーションの一つが、ChatGPTやGeminiに類似した生成AIアプリ「SenseChat」だ。文章作成、コーディング、複数ターンの対話、論理的推論、複雑な文書要約に優れている。もう一つが「SenseAvatar」で、eコマース、メディア、カスタマーサービス向けに、フォトリアリスティックな2D/3Dデジタルヒューマンアバターを作成・アニメーション化するプラットフォームである。
SenseNovaは商用アプリケーションも展開しており、その一つが「SenseFoundry」だ。これは、交通監視カメラ、都市インフラ、環境モニターなどの公共システムから得られる膨大な生の映像・センサーデータを、AIを用いてリアルタイムかつ実用的なインサイトへと変換する、包括的なスマートシティ向けソフトウェアプラットフォームである。もう一つの商用アプリケーションが「SenseEarth」で、これは衛星画像を解析し、農作物モニタリング、港湾モニタリング、建設モニタリングなど幅広い産業に自動化されたインサイトを提供する、AIを活用した強力な地理空間分析・アプリケーションプラットフォームである。
スマートオート事業(SenseAuto)では、SenseTimeは自動車メーカーと連携し、車両へのAI統合を進めている。ここでの主力ソリューションの一つが「SenseAuto Pilot スマートドライビングシステム」だ。同システムは広角・800万画素の超高精細単眼センシングカメラ「SenseAuto Pilot-V6」を搭載し、最大600メートル先の車両を検知できるほか、幅広い種類の交通標識や道路の特徴を識別できる。この事業領域におけるもう一つの重要なソリューションが「SenseAuto Cabin スマートキャビンシステム」で、運転者の本人確認、居眠り検知、脇見検知、異常検知といった機能により、運転の安全性を総合的に高める。
SenseTimeは、他の多くの中国大手AI企業とも提携関係にある点も注目に値する。10月には、半導体企業Cambricon(寒武紀)との戦略的パートナーシップ7を締結し、次世代AIインフラの共同開発と国内AIエコシステムの強化を進めると発表した。この提携は、大規模モデル研究とAIプラットフォーム開発におけるSenseTimeの強みと、インテリジェント計算チップおよび高性能処理システムにおけるCambriconの専門知識を組み合わせることを目指すものだ。両社は協業を通じて、AIインフラ革新における新たなベンチマークを打ち立て、拡張性が高くエネルギー効率に優れた、産業実装可能な人工知能システムの開発を中国が進める一助となることを期待している。
注目に値するその他の中国AI関連株
Baidu、Xiaomi、SenseTimeはいずれも印象的な技術を有しているが、中国のAI関連株全体から見ればほんの氷山の一角に過ぎない。現在、中国には強力なAIモデルを持つ企業が文字通り数百社存在しており、投資家には多くの選択肢がある。AIの勢いが増す中、この技術が今後中国経済のあらゆる側面に組み込まれていく可能性が高いことは明らかになりつつある。本稿で取り上げた企業はその先頭に立っているが、中国のAI革命の真の力は、数千に及ぶ革新的なテクノロジー企業を擁するエコシステムそのものにある。
出典:
1PR Newswire、「Baidu Unveils ERNIE 5.0 and a Series of AI Applications at Baidu World 2025, Ramps Up Global Push」、2025年11月13日時点
2myNews、「Baidu unveils AI chips to boost China's self-sufficiency drive」、2025年11月13日時点
3Road Tovr、「Xiaomi Unveils China's Answer to Ray-Ban Meta Smart Glasses with a Few Killer Features」、2025年6月26日時点
4Arena EV、「Xiaomi EV reveals next-generation driver assistance with 'World Model'」、2025年11月23日時点
5SenseTime News & Stories、「SenseTime Launches the Enhanced SenseNova V6.5: Marking the Leap from AI as a "Tool" to a "Partner"」、2025年7月30日時点
6SenseTime、「SenseAuto ADAS」、2025年11月27日時点
7SenseTime、「SenseTime and Cambricon Reach Strategic Cooperation」、2025年10月15日時点