米国におけるAI技術のブレークスルーが依然としてニュースの見出しを独占する一方で、今日の中国で起きているAI革命を無視することは難しくなっている。強力なマルチモーダル大規模言語モデル(LLM)から自動運転車に至るまで、中国は現在、米国の優位性に挑む広範かつ統合的なAIエコシステムを構築しつつある。
本稿では、2026年に注目に値する可能性のある中国のAI銘柄4社を紹介する。これらの企業は、米国企業が開発しているものと同水準の革新的なAI技術を有しており、今まさにソリューションを大規模に急速展開している。
アリババ:アクセシブルAIのリーダー
元々はEコマース企業であったアリババは、近年、クラウドコンピューティングとAIの大手企業へと変貌を遂げている。オープンソースのQwen LLMシリーズで知られ、アクセシブルAIのリーダーとしての地位を確立しつつある。
2月中旬、アリババは最新のAIモデル『Qwen 3.5』1を発表した。これは、エージェント型AI時代を見据えて特別に設計されたネイティブなビジョン・言語モデルである。同社によると、3,970億のパラメータを持ち201の言語に対応するこのモデルは、推論、コーディング、エージェント機能、マルチモーダル理解に優れており、開発者や企業が生産性を大幅に高めることを可能にする潜在力を持つという。なお、2026年初頭時点で、Qwenをベースとした派生モデルは18万を超え、Hugging Faceでのダウンロード数は7億回を突破しており、史上最も広く採用されたAIモデルの一つとなっている2。
Qwenシリーズ以外にも、アリババは他の多くの分野でAI事業を展開している。例えば、アリババクラウドは、他のAI企業にとっての『オペレーティングシステム』となることに焦点を当てたビジネスモデルへとシフトしている。現在、AIスタートアップや企業向けのワンストップサービスであるAlibaba Cloud Model Studioを提供しているほか、Platform for AI(PAI)インフラを通じて、他のスタートアップが自社モデルを同社のハードウェア上で稼働させられる専用GPU技術も提供している。
注目すべきは、2027年3月期通期についてアナリストらがアリババの利益が40%超増加すると予想している点である3。この期待される利益成長を踏まえると、2026年に間違いなく注目すべき銘柄と言えるだろう。
百度(バイドゥ):LLM、ロボタクシー、そして半導体
急速にAIの大手企業へと進化を遂げているもう一つの中国の老舗企業が百度(バイドゥ)である。同社は近年、検索エンジン事業から『AIファースト』の事業者へと自らを変革しており、生成AI、ロボタクシー、専用AIハードウェアの分野で大きな動きを見せている。
2025年後半、百度は最新のAIモデル『ERNIE 5.0』を発表した。2兆4,000億のパラメータを持つネイティブなオムニモーダルモデルであり、テキスト、画像、音声、動画を統合的にモデリングできる上、事実に基づく推論や指示追従性能に優れている。現在、百度は検索エンジンを含む同社のエコシステム全体にERNIE 5.0を組み込んでおり、検索結果の約70%が単純なリンクではなく、AIが生成したリッチメディアになっている4。
ロボタクシー部門のApollo Goに目を向けると、この事業はますます勢いを増している。2025年後半時点で、世界全体で1,700万回の乗車を提供しており、これは世界のロボタクシー企業の中で最多である5。11月には、2026年後半にロンドンで大規模なロボタクシー実証実験を行うため、UberおよびLyftと提携することを発表した6。さらに直近の2月には、UberおよびドバイのRoads and Transport Authority(RTA、道路交通庁)との提携を通じて、ドバイで初の大規模海外展開を開始すると発表した7。
AIハードウェアについては、百度は昨年後半に強力なAIチップ『崑崙(コンルン)M100』および『M300』を発表した。前者は大規模な推論ワークロードを支えるために設計され、後者は学習と推論の両方に対応する製品として開発された。なお2026年初頭、同社はチップ部門である崑崙芯(コンルンシン)を香港証券取引所(HKEX)のメインボードに上場するための非公開申請を提出したと発表した8。この動きは、百度のチップ事業に眠る潜在的な価値を顕在化させ、崑崙芯に独自の資金調達手段を持たせることで研究開発を加速させることを狙いとしている。
財務面では、百度の直近の第4四半期決算はAIソリューション事業の力強い成長を示した。同四半期、AI関連のコア事業の売上高は113億人民元となり、前年同期比48%増加した9。総じて、百度には多くの追い風があるように見える。今後、同社は中国のAIブームにおいて主要な役割を果たす可能性が高い。

寒武紀科技(カンブリコン):『中国のエヌビディア』か
寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)は、中国半導体市場におけるもう一つの主要プレーヤーである。高性能AIアクセラレータを専門とする同社は『中国のエヌビディア』と呼ばれてきた。
カンブリコンの主力製品は『思元(スーユエン)590』および『思元690』である。これらのAIチップは、エヌビディアやファーウェイなどが手がけるデータセンター向け学習・推論用のハイエンドGPUと競合するよう設計されている。ただし、カンブリコンはチップの製造だけを行っているわけではなく、『NeuWare』と呼ばれる独自のソフトウェアスタックも提供しており、これはエヌビディアのCUDAプラットフォームに直接対抗するものである。
中国が半導体の自給自足を追求する中、カンブリコンの業績は最近非常に好調である。1月、同社は2025年の売上高が60億~70億人民元(約9億~10億5,000万米ドル)になる見通しであると発表し、これは2024年比で411%~496%の増加を意味する10。また、純利益は前年の4億5,200万人民元の損失から一転し、18億5,000万~21億5,000万人民元になる見通しだとした。今回の発表の中で同社は、AIチップ製品の競争力を活かして新たな市場用途への展開に成功していると述べた。
特筆すべきは、カンブリコンが2026年にチップ生産を大幅に増強する計画を立てている点である。ブルームバーグによれば、同社は2026年に思元590・690プロセッサ最大30万基を含む、約50万基のAIアクセラレータを出荷することを目指しており11、これは2025年からの生産量を3倍以上に拡大するものとなる。
ECARX:次世代車両への投資機会
中国の自動運転技術と言えばXPengや百度といった銘柄に注目が集まりがちだが、注目に値するもう一つの企業がECARXである。ナスダック上場の同社は、システム・オン・チップ(SoC)ハードウェアやAI搭載のデジタルコックピットを含む、次世代車両向けのターンキーソリューションを提供するグローバルな自動車テクノロジー企業である。
ECARXは2017年に、沈子瑜(シェン・ズユー)氏と、Geely Holding Groupの会長で億万長者の李書福(リー・シューフー)氏によって共同設立された。李氏のおかげで、同グループは著名な自動車メーカー各社との強力なパートナーシップを構築することができた。現在、Volvo、Polestar、Volkswagen、東風プジョー・シトロエンなど、約30の自動車ブランドと取引している。これまでに、同社の技術は世界で約1,100万台の車両に採用されている12。
2月中旬、ECARXは2025年第4四半期の決算を発表し、好調な内容となった13。同四半期の売上高は3億470万米ドルで前年同期比13%増加し、純利益は280万米ドルとなり、前年同期の600万米ドルの損失から黒字転換した。今後については、同社のコンピューティングプラットフォームが自動車メーカーの力強い販売を後押しする能力についてますます評価が高まっていることから、この勢いを維持できる見通しであるとしている。重要な点として、同グループは2億米ドルの資金調達を実施したばかりであり、これを研究開発プログラムとサプライチェーンインフラの拡充、グローバル展開の加速、そして高付加価値のソフトウェア・AIサービスへの事業シフトの推進に活用する計画である。
中国AI株のリスクを理解する
中国のAI産業は今後数年にわたり力強い成長が見込まれる一方、投資家は中国AI株特有のリスクにも留意すべきである。上場廃止リスクの可能性から変動持分事業体(VIE)構造をめぐる不確実性まで、認識しておくべき論点は数多い。こうしたリスクを踏まえると、この資産クラスに対しては分散型のアプローチを取ることが理にかなっている。複数の企業に資金を分散させることで、投資家は個別銘柄リスクを軽減しつつ、中国のAIエコシステムの成長を捉えられる可能性を高めることができる。
脚注:
1Qwen、Qwen3.5: Towards Native Multimodal Agents、2026年2月15日時点
2English News、Alibaba's Qwen leads global open-source AI community with 700 million downloads、2026年1月13日時点
3LSEG、2026年2月26日時点
4百度公式Xアカウント、2025年11月13日時点
5CNBC、China's Baidu says weekly robotaxi rides hit 250,000 - same as Alphabet's Waymo this spring、2025年11月2日時点
6BBC、Uber and Lyft announce plans to trial Chinese robotaxis in UK in 2026、2025年12月22日時点
7Uber Investor、Baidu and Uber Partner to Bring Apollo Go Autonomous Ride-hailing to Dubai in Collaboration with Dubai's Roads and Transport Authority、2026年2月10日時点
8百度、Baidu Announces Proposed Spin-off and Separate Listing of Kunlunxin、2026年1月1日時点
9百度、Baidu Announces Fourth Quarter and Fiscal Year 2025 Results、2026年2月26日時点
10tom's Hardware、Cambricon targets 500,000 AI chips in 2026 as China accelerates domestic hardware push - low yields and limited HBM supply could threaten chip ambitions、2025年12月12日時点
11寒武紀科技、2025 Annual Performance Forecast、2026年1月31日時点
12ECARX、The shift towards next-gen vehicle technologies creates a large and growing market opportunity、2026年2月26日時点
13ECARX、ECARX Announces Fourth Quarter 2025 Unaudited Financial Results、2026年2月12日時点
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