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2025年7月16日

中国テック革命、生成AIが本格離陸

リサーチ / Themesからの視点

今年初め、DeepSeekのリリースにより、世界は中国発の生成人工知能(GenAI)の実力を目の当たりにした。ChatGPT、Gemini、Perplexityなど米国発のGenAIアプリと同様、このアプリは瞬く間に人気を博し、米国を含む50カ国以上でApp Storeのランキング首位に躍り出た。現在も同アプリの人気は衰えておらず、大学から、HSBCやサウジアラムコといった多国籍企業まで幅広いユーザーが利用している1。専門家の中には、DeepSeekのコストはChatGPTと比べて最大95%低いと指摘する声もあり、高性能なAIソリューションを求めるユーザーにとって非常に魅力的な選択肢となっているようだ。

しかし、DeepSeekは中国の生成AIのほんの氷山の一角に過ぎない。現在、中国の大手テック企業のほぼすべてが独自の生成AIアプリケーションを保有しており、その中には非常に高い評価を得ているものも少なくない。国を挙げた大規模な投資、膨大なデータエコシステム、そしてコスト効率を重視したイノベーションに支えられ、中国のテック企業は今まさに最先端のAIソリューションを開発しており、米国の優位性に挑戦するとともに、東西間のAI開発競争の舞台を整えつつある。

Baidu(百度)、オープンソース化へ舵を切る

中国の生成AI開発を牽引する企業の一つがBaidu(百度)だ。同社は「ERNIE(Enhanced Representation through Knowledge Integration)」という強力なプラットフォームを提供しており、月間アクティブユーザー数は現在約2,300万人に上る2。このチャットボットは3月から無料化されており3、6月30日には完全にオープンソース化された4。

主力の生成AIモデルのコードを一般公開しオープンソース化することで、Baiduはより多くのユーザーを獲得し、ERNIEを中心とした活発な開発者エコシステムを構築することを狙っている。これはAPIアクセスに課金するよりも収益性が高くなる可能性がある。このオープンソース戦略が実を結ぶ保証はないが、現時点で最上位モデルへのアクセスに課金しているOpenAIやAnthropicといった米国の生成AI開発企業、そしてDeepSeekのような中国のAI企業にとってはリスクとなり得る戦略だ。

Alibaba、企業導入が拡大

中国のAIブームの中心にあるもう一つのテック企業が、Eコマース大手のAlibabaだ。同社はAlibaba Cloudが開発した大規模言語モデル(LLM)群「Qwen」シリーズを提供しており、こちらもオープンソースとなっている。Alibabaによれば、2023年4月のデビュー以来、Qwenファミリーは全世界で3億回以上ダウンロードされている5。これまでに開発者によって10万を超えるQwenベースの派生モデルが生み出されており、世界で最も広く採用されているオープンソースAIモデル群の一つとなっている。

現在、製薬会社のAstraZeneca、コンシューマーヘルスケア企業のHaleon、化粧品大手の資生堂(Shiseido)など、名だたる多国籍企業がQwenを利用している6。これらの企業は同技術を活用し、データ分析の高度化、イノベーションの創出、顧客体験の向上を図っている。Qwenプラットフォームの大きな特長の一つが多言語対応能力だ。現在119の言語・方言に対応しており、翻訳や多言語での指示理解において業界トップクラスの性能を誇る6。

Tencent、WeChatを武器に

時価総額で中国最大のテック企業であるTencent7も、当然ながら生成AI分野に積極的に取り組んでいる。同社の主力AI製品は「混元(Hunyuan)」シリーズのモデルで、中国語の処理・理解能力の高さで知られる。Tencentが他の中国テック企業に対して持つ潜在的な強みは、決済からゲーム、SNS、Eコマースまであらゆる機能を備えたスーパーアプリ「WeChat(微信)」を保有している点だ。WeChatの月間アクティブユーザー数は現在約14億人に上り8、アプリ内では「元宝(Yuanbao)」チャットボットを通じてHunyuanが統合されている。これだけ膨大なユーザー基盤を持つことで、同社はAIモデルの学習データを文字通り山のように確保できる立場にある。

ByteDance、勢いを維持

もう一つ注目すべき中国のテック大手が、TikTokおよびその中国版である抖音(Douyin)を運営するByteDanceだ。同社は現在、中国で最も人気の高い生成AIアプリの一つである「豆包(Doubao)」を保有している9。DoubaoはDouyinに統合されていることで数億人のユーザーの目に触れ、アクセスしやすい点が成功の要因となっている。また、ByteDanceが強みとするレコメンデーションアルゴリズムの技術も活かし、文脈に即した高い関連性のある回答を提供することでユーザー体験を最適化している。さらに、ByteDanceは積極的な価格戦略を採用しており、Doubaoの高度な機能を非常に手頃な価格で提供している。例えば、上位モデルの「Doubao Pro」はOpenAIのGPT-4を大幅に下回る価格設定となっており10、企業向けの利用コストも引き下げられている。

中国の「六小虎(Six Tigers)」

中国では大手テック企業だけでなく、より小規模なスタートアップも生成AIで成果を上げている点は注目に値する。その勢いから、中国の有力AIスタートアップ群を指す「中国の六小虎(Six Tigers)」という呼称まで生まれている。これらのスタートアップは以下の通りだ。

  • Zhipu AI(智譜AI)- 中国最古参の生成AIスタートアップの一つで、チャットボット「ChatGLM」やGLM-4シリーズのモデルで知られる。

  • Moonshot AI(月之暗面)- チャットボット「Kimi AI」で知られ、長文クエリの処理能力の高さで人気を集めている。

  • 01.AI(零一万物)- Yiシリーズのモデルで知られ、Apple、Microsoft、Googleでのキャリアを持つ李開復(カイフー・リー)氏が創業した。

  • MiniMax - 人気AIチャットボットアプリ「Talkie」やテキストから動画を生成するAI「Hailuo AI」を開発。

  • StepFun(階躍星辰)- 元Microsoft幹部が創業し、マルチモーダルモデルで注目を集めている。

  • Baichuan Intelligence(百川智能)- Baichuan-7BやBaichuan-13Bなど、複数のオープンソース大規模言語モデルを開発している。

これらの企業はいずれも、高度なAIプラットフォーム、優秀な人材層、そして中国大手テック企業からの大型資金調達で高い評価を得ている。そして、中国がAI分野で世界的リーダーとなるための取り組みにおいて、重要な役割を担う存在とみなされている。

今後の展望

現在も、OpenAIのChatGPTは週間アクティブユーザー数数億人を誇る、世界で最も人気の高い一般消費者向けAIチャットボットであり11、米国製AIは依然として業界のゴールドスタンダードとみなされている。しかし近年、中国企業は米国の技術にほぼ匹敵する性能のAIをはるかに低い価格で提供することで、シェアを獲得し始めている。その結果、世界のAI勢力図は急速に変化しつつある。

なお6月には、ハーバード大学の研究者による重要・新興技術に関する調査で、中国はAIの根幹をなす2つの要素であるデータと人的資本において優位性を持つとの結果が示された12。BaiduやAlibabaといった中国のテック企業は、AIモデルをオープンソース化することで開発者による採用を促進し、さらなる恩恵を得ている。したがって、今後数年間のAIの動向は目が離せないものとなるだろう。中国が世界的なAI革命において中心的な役割を果たすことは間違いなさそうだ。

脚注:

1 WSJ、"China Is Quickly Eroding America's Lead in the Global AI Race"、2025年7月1日時点

2 Silicon Angle、"China's Baidu declares war on OpenAI and others by open-sourcing Ernie chatbot"、2025年6月29日時点

3 PR Newswire、"Baidu Unveils ERNIE 4.5 and Reasoning Model ERNIE X1, Makes ERNIE Bot Free Ahead of Schedule"、2025年3月16日時点

4 CNBC、"China's biggest public AI drop since DeepSeek, Baidu's open source Ernie, is about to hit the market"、2025年6月30日時点

5 Alibaba Cloud、"Alibaba Introduces Qwen3, Setting New Benchmark in Open-Source AI with Hybrid Reasoning"、2025年4月29日時点

6 Alibaba Cloud、"Tongyi Qianwen (Qwen)"、2025年7月7日時点

7 Companies Market Cap、"Largest Chinese companies by market capitalization"、2025年7月7日時点

8 Statista、"WeChat - statistics & facts"、2025年4月15日時点

9 SCMP、"Alibaba's Quark surpasses ByteDance's Doubao, DeepSeek as China's top AI app"、2025年4月13日時点

10 Tech Node、"ByteDance surprises AI rivals with ultra-low cost Doubao model"、2025年5月16日時点

11 Exploding Topics、"Number of ChatGPT Users (June 2025)"、2025年6月24日時点

12 Belfer Center、"Critical and Emerging Technologies Index"、2025年6月5日時点

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