かつてニッチな投資対象、あるいはディフェンシブなヘッジとみなされてきた防衛関連株は、分散投資ポートフォリオの重要な構成要素として、ますます認識されるようになっている。今日の防衛関連企業は単に装備を販売しているだけではない。予測不能さを増す世界において、各国が主権を維持するために必要な構造的安全保障を提供しており、それは各社の売上高、利益、株価の推移に表れている。
先を見据えると、防衛は2026年を象徴する投資テーマの一つになる現実的な可能性がある。今年、投資家がこのセクターを無視できない理由を以下に示す。
相次ぐ地政学的ショック
2026年初頭に発生した数々の地政学的ショックは、投資家にとって不安定な現実 ― 世界秩序が依然として深く不安定であること ― を改めて浮き彫りにした。今年に入ってすでに、半球規模の現状を覆し、世界の株式市場に波紋を広げた大きな出来事がいくつも起きている。
最初の大きな出来事は、1月初旬に発生した米国による高強度の軍事介入だった。舞台となったのはベネズエラで、その結果、指導者ニコラス・マドゥロ氏が拘束され、麻薬テロおよび麻薬密売の連邦罪状で訴追されるべく速やかに米国へ移送された。マドゥロ氏の拘束後、米国は同国に対する暫定的な行政管理権を正式に宣言し、同国の石油産業(ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を有する1)を直接管理する動きに出た。この出来事は、米国が地域における覇権を主張し、体制転換を強行するために軍事力を行使する用意があるというメッセージを発するものとなり、投資家が新たな「砲艦外交」の時代を織り込む中、防衛関連株が即座に急騰する結果となった。
ベネズエラ介入の勢いに乗る形で、米国政権はその後、デンマーク王国内の自治領であるグリーンランドの獲得に向けた動きを強めた。グリーンランドには、世界最大級の未開発のレアアース資源(AI向け半導体やEV用バッテリーから戦闘機、ロボティクスに至るまであらゆるものに不可欠)が眠っており、現政権はこれを国家安全保障上重要な資産とみなしている。また、グリーンランドはユーラシアと北米を結ぶミサイルの最短飛行経路上に位置しているため、米国の「ゴールデンドーム」計画(米国を防衛するために設計された多層型ミサイル防衛シールド)にとっても戦略上重要な意味を持つ。もっとも、米国によるグリーンランド支配の戦略的合理性は明確である一方、この動きはデンマークとの間で深刻な外交危機を引き起こし、NATO同盟の根底にある信頼関係を揺るがすこととなった。
デンマークは米国と歩調を合わせるのではなく、グリーンランドが無防備な地域ではないことを示すべく、多国間による軍事的対応を主導している。同国は北極圏統合司令部(デンマーク王国北部領土の軍事防衛・安全保障を担う統合作戦本部)を増強するため、200名を超える追加の部隊を派遣した。フランス、ドイツ、スウェーデン、英国、フィンランド、ノルウェー、オランダも同島に人員を派遣しており、米国によるグリーンランドへの一方的な行動には欧州の結束した対応で臨むという姿勢を示している。これを受けてトランプ大統領は、2月1日よりデンマークおよび他の欧州同盟国7カ国からの全輸入品に対し一律10%の関税を課すと発表し、グリーンランドをめぐる合意が成立しない限り、その税率は6月1日に25%へ引き上げられるとしている2。この動きは、領土獲得と国際通商政策を事実上結びつけるものとなり、NATO内部に地殻変動級の亀裂を生み出している。
防衛費のスーパーサイクル
こうした不安定な情勢と、さらなる地政学的ショックのリスクを背景に、各国が抑止から実効的な領土・資源確保へと軸足を移す中、世界の防衛費は歴史的な加速局面を迎えつつあるように見える。この転換の規模を踏まえ、多くのアナリストは、私たちが今、防衛費の「スーパーサイクル」を目にしていると見ている。
米国では、トランプ大統領が2027年に向けて1.5兆ドル規模の国防予算を求めている3。これは2026年予算からほぼ60%の増額となる。一方、欧州ではNATO加盟国が、従来の2%という基準から、2035年までにGDP比5%という新たな基準へと急速に移行しつつある。現在の情勢と、数十年にわたる過小投資によって疲弊した欧州の軍事力の状態を踏まえると、この防衛費の増額が前倒しで進む可能性は十分にある。デンマークの防衛費は、わずか3年間でGDP比1.4%から3.2%へと急増した点は注目に値する。この間、同国の防衛装備支出は4倍に拡大している4。
結局のところ、世界の防衛予算は、裁量的な支出から恒常的に高水準を維持するベースラインへと移行したように見える。その結果、主要な防衛関連企業は現在、かつてない水準の収益の見通しの確かさを手にしている。
過去最大の受注残高
すでに、防衛費の増額はこの業界で事業を展開する企業各社の受注残高に表れ始めている。現在、多くの大手防衛関連企業は膨大な受注残高を抱えている。
ラインメタルを例に挙げよう。2025年第3四半期末時点で、同社の受注残高は過去最高の640億ユーロ5に達し、2024年初の水準からほぼ70%増加した6。同社は欧州企業として、各国が米国の防衛関連企業への依存を減らそうとする欧州の「戦略的自律性」の潮流から主に恩恵を受けている点に注目したい。同社は最近、ドイツ、ポーランド、ハンガリーなど複数の欧州諸国から大型の装備発注を受けている。
膨大な受注残高を抱えるもう一つの欧州企業がBAEシステムズだ。2025年半ば時点で、同社の受注残高は754億ポンド7に達し、2026年の推定売上高の2倍以上に相当する。ラインメタルと同様、BAEシステムズも欧州各国が防衛ソリューションの調達先を欧州企業に切り替える動きから恩恵を受けている。しかし同社は米国政府向けの主要サプライヤーでもあり、トランプ政権による防衛費増額からも恩恵を受けている ― 昨年には、米宇宙軍向けに宇宙ベースのミサイル追跡能力を提供する12億ドル規模の契約を獲得した7。

世界最大の防衛関連企業であるロッキード・マーティンに目を向けると、第3四半期末時点の受注残高は1,790億ドルに達し、総売上高の2年半分以上に相当する。この受注残高は、F-35戦闘機の記録的な受注、PAC-3迎撃ミサイルの大規模な増産、CH-53K重輸送ヘリコプターの多年度にわたる大型契約など、優先度の高い複数のプラットフォームに分散している。ロッキード・マーティンの第3四半期決算発表において、経営陣は現在「かつてない需要」に直面していると述べ、米国のゴールデンドーム・ミサイル防衛システムが今後の主要な成長ドライバーになる可能性が高いとの見方を示した。同社はまた、米国とその同盟国の最優先の防衛ニーズに対応するために必要な新たな物理的生産能力に積極的に投資していると付け加えた。
アナリストは防衛関連株のさらなる上昇余地を見込む
これらの銘柄のパフォーマンスに目を向けると、いずれも年初来で約20%上昇しており、主要な世界株価指数を大きく上回るパフォーマンスとなっている。それでもアナリストは強気姿勢を崩さず、目標株価を引き上げている。例えば、JPモルガンのアナリストは最近、BAEシステムズの目標株価を2,200ペンスから2,400ペンス8に引き上げ、ゴールドマン・サックスのアナリストはラインメタルの目標株価を2,200ユーロから2,300ユーロ9に引き上げた。いずれのケースでも、これらの新たな目標株価は各社の現在の株価を大きく上回っている。これは、アナリストが防衛関連株の強気相場が今後も続くと見込んでいることを示している。
説得力のある投資ストーリー
これらすべての強気材料を踏まえると、2026年の幕開けにあたり、防衛関連株を無視することは難しい。世界的にかつてない水準の地政学的な不安定さと、各国の歳出構造の転換を踏まえれば、防衛セクターへの投資ストーリーは、これまでになく説得力を増している。現在、投資家は地政学的ショックのリスクが今後もなくならないこと、そして防衛関連企業がかつてない規模の地政学的分断の時代において国家安全保障の鍵を握っていることを認識しつつあり、防衛業界は根本的な再評価(リレーティング)の局面を迎えている。領土的安定が世界的な最優先課題となる中、防衛セクターはもはや投資家にとっての選択肢の一つではなく、戦略的な必須項目となっている。
Footnotes:
1EOG, 6 Countries with the Largest Crude Oil Reserves in the World, 2025年6月25日時点
2The Guardian, What are Trump's latest tariff threats and could EU hit back with 'trade bazooka'?, 2026年1月19日時点
3Reuters, Trump calls for $1.5 trillion military budget in 2027, up from $901 bln in 2026, 2026年1月8日時点
4European Business Magazine, European Defence Stocks Surge as Greenland Tensions Mount, 2026年1月19日時点
5ラインメタル, Q3 financial report: Rheinmetall shows steady growth and expands defence business by almost a third, 2025年11月6日時点
6ラインメタル, Financial figures for 2023: Rheinmetall is on track for success – Another all-time earnings high, new record order backlog, 2024年3月14日時点
7BAEシステムズ, Today we announced the Group's half year results for 2025, 2025年7月30日時点
8Proactive Investors, BAE Systems rises on geopolitical uncertainty; US bank sums up the narrative, 2026年1月13日時点
9Market Screener, RHEINMETALL AG, 2026年1月22日時点
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