銀行株の全盛期はすでに過去のものだという見方は捨てた方がよさそうだ。今年、銀行株はまさに輝きを放っており、市場全体を大きく上回るパフォーマンスを見せている。米国では、Dow Jones US Banks指数が2025年上半期に13%のリターンを記録し1、S&P500指数のリターンの2倍以上となった。欧州銀行株のパフォーマンスはさらに際立っており、Stoxx 600 Banks指数は同期間に29%のリターンを記録、これは1997年以来最も好調な上半期のパフォーマンスとなった2。
この目覚ましいアウトパフォーマンスの背景には、複数の要因が組み合わさっている。マクロ経済の変化から規制面での追い風まで、銀行株にとって強気な環境を作り出しているさまざまな要因が働いている。ここでは、2025年の銀行株上昇を後押しする主な要因を見ていく。

利下げ期待
今年見られた銀行セクターの上昇において、金利低下への期待が主要な牽引役となってきたことは間違いない。金利の低下は融資需要を刺激し、住宅ローン、事業融資、消費者信用など幅広い分野での活動拡大につながると期待されている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月の会合で政策金利を4.25〜4.50%に据え置いた。しかし、FRBの「ドットプロット」では、年内にあと2回の利下げを実施する計画が示されている3。複数回の利下げが実現すれば、金利低下によりマイホーム取得のハードルが下がることから、住宅ローン需要にプラスの影響を与える可能性がある。金利低下はまた、借り換え(リファイナンス)需要の増加にもつながり得る。
欧州では、欧州中央銀行(ECB)が景気支援のためすでに複数回の利下げを実施しており、過去1年間で8回の利下げを行った4。この結果、預金金利は現在わずか2.00%となっている。こうした金利環境を背景に、欧州全体で今年の融資は増加すると見込まれている。グローバル不動産アドバイザリーのCBREが実施した最近の調査によれば、貸し手の約80%が2025年に新規融資の取り組みを拡大する計画であり、需要の主な牽引役はリファイナンスであるとされている5。
トランプ政権下での規制緩和
今年の銀行セクターのアウトパフォーマンスを支えるもう一つの主要因が、トランプ政権下での米国の規制緩和への期待だ。今後、投資家は2008年の金融危機を受けて導入された自己資本・レバレッジ要件に関する規制の見直しを見込んでいる。具体例が「強化補完的レバレッジ比率(eSLR)」で、これは米国内で最大かつシステム上重要とされる銀行を対象とし、十分な資本のクッションを確保させることで金融安定性を強化するために設けられた規制だ。これらの規制が見直されれば、融資に振り向けられる資本の余力が生まれ、銀行の収益性向上につながる可能性がある。

ストレステストの結果
規制緩和をリスクと捉える投資家もいる一方で、6月に実施されたFRBの年次ストレステストでは、米国の金融機関が経済的な混乱にも十分耐えうる体制にあることが示された。今年のストレステストでは、対象となった22行すべてが、仮想の「深刻な景気後退」シナリオ下でも普通株式等Tier1(CET1)比率の最低要件を上回った6。この結果はセクター全体の株価上昇にもつながったが、米国の銀行が強固な基盤の上に成り立っていることを示している。また、規制上の明確な制約が今後緩和されたとしても、安全に業務を運営できるだけの資本力とリスク管理能力を備えていることも示唆している。
IPO活動の活発化
IPO(新規株式公開)活動の活発化も、2025年の銀行株にとって強気な環境作りに寄与している。ここ数カ月、IPO市場は活況を呈しており、CoreWeave、Circle Internet Group、Chime、eToroなど、さまざまな企業が上場に成功している。
これらの銘柄が上場後も好調な株価パフォーマンスを見せていること(CircleはIPO価格から500%超上昇)は、これから上場を控える企業の自信を高め、新規上場ラッシュにつながる可能性がある。今後、上場を控える大型銘柄もいくつか存在する。今年中にIPOする可能性がある企業としては、後払い決済(BNPL)大手のKlarna、チケット販売のStubHub、暗号資産取引所のGemini、AI半導体のCerebras、出張管理ソフトウェアのNavanなどが挙げられる。
IPO市場が引き続き活況を維持すれば、IPO分野で積極的な活動を続けるGoldman Sachs、JP Morgan Chase、Morgan Stanleyをはじめとする銀行各社が恩恵を受ける可能性が高い。なお、Renaissance Capitalは2025年のIPO件数を155〜195件と予想しており、2024年の150件から増加する見通しだ7。

良好な株式市場環境
金融市場全体の環境も、銀行セクターにとってもう一つのプラス要因となっている。現在、Morgan Stanley、JP Morgan、UBSをはじめとする多くの銀行が大規模な資産運用(ウェルスマネジメント)事業を展開しており、その収益の大部分は資産運用残高(AUM)に基づく運用報酬から得られている。株式市場が過去最高値付近で推移する中、これらの銀行は恩恵を受けている。JP Morganを例に取ると、同社のウェルス・アセットマネジメント部門は2025年第1四半期の純収益が57億3,100万ドルとなり、前年同期比12%増を記録した。同部門の純利益は前年同期比23%増の15億8,300万ドルとなった8。
最近見られる市場のボラティリティの高まりも、銀行にとって潜在的なプラス要因となり得る。大手銀行の多くは自社トレーディング部門を持っており、ボラティリティから恩恵を受けることができる。また、ボラティリティが高まると、投資家がポートフォリオを組み替えるため、顧客の取引活動が活発化する傾向がある。
セクターローテーションと国際分散
銀行株は2025年、セクターローテーションからも恩恵を受けている。今年は「マグニフィセント・セブン」への投資が、投資家が期待してきたようなリターンをもたらさなかった。その結果、投資家は市場の中で他の有望な分野を探し始めており、割安なバリュエーション、健全な配当利回り、自社株買いを背景に、銀行株には資金流入が見られている。
2025年には、政治情勢の不安定さを背景に、多くの機関投資家が米国から資金を移動させている点も注目に値する。これは欧州株式市場にとって追い風となっている。欧州では、銀行株がStoxx Europe 600指数の構成比の約12%を占めており9(セクター別で3番目に大きい比率)、欧州への資金流入が銀行セクターを押し上げている。
欧州における業務効率化とM&A活動
もっとも、欧州銀行株を押し上げているのは資金流入だけではない。現在、多くの銘柄が業務効率化の進展やM&A活動の活発化からも恩恵を受けている。今年、Société Générale株はCEOのSlawomir Krupa氏が主導する事業再建計画により、ほぼ2倍に上昇した。この計画は、非中核事業からの撤退、バランスシートの強化、収益性目標の引き上げを柱としており、成果が表れつつあるようだ。第1四半期のグループ純利益は16億ユーロと、前年同期比136%増を記録した10。欧州でもう一つ好調だったのがCommerzbankだ。同社株価は、2024年9月にUniCreditが出資して合併の可能性が浮上して以来、2倍以上に上昇している。
Oliver Wymanによれば、2025年入り以降、欧州の銀行関連M&A案件の発表額は過去最高の270億ドルに達しており、2024年同期の約2倍の規模となっている11。現在、欧州の銀行はウェルスマネジメントや決済といった機能の獲得、さらには収益の質の向上や株主還元の強化を目的として、M&Aの活用をますます進めている。
センチメントの転換
まとめると、銀行株を取り巻く見方は2025年に入り大きく転換した。今年は利下げ期待、米国での規制緩和の動き、そしてIPO市場の活性化といったさまざまな要因が銀行株へのセンチメントを押し上げ、目覚ましい水準まで押し上げてきた。もちろん銀行株は景気循環の影響を受けやすいセクターであり、この上昇トレンドが続く保証はない。しかし、バリュエーションは依然として妥当な水準にあり、配当や自社株買いも増加していることから、2025年下半期も注目に値する銘柄群だと言えるだろう。
脚注:
1 S&P Global、"Dow Jones U.S. Banks Index"、2025年7月11日時点
2 Yahoo Finance!、"European Banks' First-Half Stock Gains Are Biggest This Century"、2025年7月1日時点
3 CNBC、"Fed holds key rate steady, still sees two more cuts this year"、2025年6月18日時点
4 Reuters、"ECB cuts rates for eighth time amid trade war risk"、2025年6月5日時点
5 CBRE、"European Lending Activity Expected to Rise, According to New CBRE Survey"、2025年6月12日時点
6 Yahoo Finance!、"U.S. bank stocks rise after Fed stress test results"、2025年6月30日時点
7 DealRoom、"Upcoming IPOs in 2025 and Recent IPOs Reviewed"、2025年5月14日時点
8 JP Morgan Chase、"First Quarter 2025 Results"、2025年4月時点
9 STOXX、"Index Description"、2025年7月14日時点
10 Societe Generale、"Results at 31 March 2025"、2025年4月30日時点
11 OliverWyman、"European Banking M&A Surges In 2025"、2025年7月14日時点